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2023.10.31 山奥の工事現場をドローンで遠隔監視、低軌道衛星通信は労働環境の改善にもつながる(日経クロステック)

土木・建築現場でのスターリンクの利用イメージ(出所:日経クロステック)

山奥にあるトンネル工事の現場。その一角からドローンが空に飛び立つと、搭載するカメラで周囲を撮影し、低軌道衛星を介して遠隔地へと映像を送った――。飛島建設は衛星ブロードバンドインターネット「Starlink(スターリンク)」を導入することで、土木・建築現場でのデジタル化の推進を目指している。

大容量通信が必要な「遠隔臨場」
実証実験でドローンが飛行する様子(出所:飛島建設)

 工事現場が山奥などにあると、光通信が敷設できておらず、さらにはモバイルネットワークの電波まで届かないことがある。「自前で光通信を敷設しようとすると、工事が大規模になって数千万円のコストが必要となる。さすがに自社で用意するのは現実的ではない」(飛島建設技術研究所研究開発G第一研究室の勝部峻太郎研究員)。10年以上の工期があったとしても、工事が終われば使わなくなる場所へ多大な設備投資はできない。
 一方で静止衛星通信であれば山奥にも通信環境を用意できる。ただし「約100万円の設備で2Mbpsの通信を利用するといったレベルになってしまう」(勝部研究員)。通信容量の点で用途は限定的だ。天気予報の確認や資材の発注といった使い方である。
 ところが近年、土木・建設現場での大容量通信の必要性が増している。その1つが「臨場」の遠隔化だ。臨場では、工事が進む中で発注者が現場に赴き、現場の状況を確認して作業の方向性を検討したり、適切に作業が進んでいるかを確認したりする。
 従来は発注者が現場で目視確認することが当たり前だった。「担当者は多くの時間を割いて現地を訪問していた」(勝部研究員)。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を機に、遠隔臨場の機運が高まった。感染症予防や移動時間の削減のため、Webカメラなどを介しての立ち会い作業が可能になった。画像や映像などの大容量データを送受信する必要性が高まったのである。
 ただ通信環境が整っていない山奥では簡単に遠隔臨場を実施できるわけではない。「通信環境が整っている事務所まで戻り、撮影した画像データを送付する。ただし、撮影が不十分だと撮り直しの手戻りが発生する。現場にいて、より詳細に知りたい場所などの指摘を受けながらの方が効率的だ」(勝部研究員)
 そこで着目したのがスターリンクで通信環境を整えることだ。撮影した画像を即座に確認してもらえれば、必要十分な撮影を確実に実行できる。加えて、この撮影作業にドローンを導入し、そのドローンを遠隔地から操縦できれば意思疎通の手間も減らせる。さらに、ドローンであれば人手では撮影できないアングルの画像も確認可能だ。